院長ブログ

増殖性硝子体網膜症

2022年11月17日

網膜剥離や糖尿病網膜症が長く続いた場合や、網膜剥離の手術で裂孔が完全に塞がらなかった場合に、網膜の表面や硝子体内に線維性の細胞が増え、増えた線維性の細胞から、硝子体と網膜の間に増殖膜がつくられます。増殖膜や硝子体が縮んで網膜を前方に引っ張るため、網膜が剥がれてしまいます。(牽引性網膜剥離)。重症例では、網膜の裏側にも増殖膜ができ、難治性網膜剥離へと進行してしまいます。

埼玉に来て、重症糖尿病性網膜症の患者様を手術する機会が増えました。また、他院で何度か手術をした網膜剥離でこの増殖性硝子体網膜症(以下PVR)になっている患者さまを手術させて頂く機会も時々あります。

このような患者様は以前は数ヶ月に一人くらいでしたが、今は、景気の悪化やコロナによる受診控えなどにより、私の印象では増えているように思います。

このような方の手術はお一人に2時間近くかかる事もよくあり、手術する場合は、他の患者様の手術のクオリティを確保するためにも1日にお一人だけ予定に入れるようにしています。

しかし、最近このような患者様の紹介が増えて来ており、どうしても予定が組めず、先日は1日で2人連続で日帰りにて手術をさせて頂くことになりました。

お一人は、内科的疾患のため体調が悪く網膜剥離を長期放置された方、

お一人は糖尿病性網膜症が悪化しており、両眼ともほぼ視力がない状況で、一人での通院も困難な方でした。この方は、驚く事にそのような状況でも、周りの方達の協力のもと一生懸命働かれており、今後も仕事を続けて行きたいと、両眼の手術を希望されました。

その方を見ていると、なんか切なくなり、絶対、なんとかしたいと思いました。手術当日も親切なお友達が付き添ってくださり、なんとか無事良い手術ができました。

2人とも、PVRのため網膜は全部剥がれ、傘が畳まれたように網膜はくっついていました。網膜の表面と裏にできた増殖膜をはがしながら、網膜を少しづつ広げていき、畳まれていた網膜が、傘のように開いたところで眼の中に油を詰めて終了しました。

お2人で4時間30分くらいかかり、この日は流石に疲れました。

翌日、オイル下で網膜剥離は復位しておられ、安心しましたが、ここで気を抜くとPVR状態に逆戻りしてしまう事があり得るのがこのPVRが恐れられる疾患の所以で、術後もしっかりとメンテナンスが必要です。

今も紹介先の先生と協力して外来で経過を診させていただいています。

一人では通院できなかった方も、今はお一人でバスを使って、地元のクリニックや当院へ通院されており、少し見えるようになったと微笑んでくれます。この笑顔だけでまた頑張れます。

来月、反対眼の手術を予定しております。〇〇さん、また、力を合わせて頑張りましょう。

編著 さいたま市のくらかず眼科 院長 倉員敏明

倉員 敏明 院長の独自取材記事

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