2024年5月7日
最近、当院では、糖尿病性網膜症が悪化した増殖性糖尿病網膜症の手術が増えています。
この病態へと進展する方は、比較的若く働き盛りの方に多く見られます。出血や網膜剥離を合併すると、手術による治療しか治療方法がありません。
手術次第ではその方のその後の生活を大きく損なってしまう反面、上手く手術できれば、社会復帰に大きく役立つ事になり、大変やりがいのある手術ですが、出来ればこれは避けたい手術ですし、避けられる手術でもあります。
増殖性糖尿病網膜症になられている方の多くは、内科的治療を途中でやめたり、定期検診を受けない事で、糖尿病である事に気づかず、結果的に放置していた方に多く見られます。
糖尿病は、会社勤めの方は、会社での健康診断などで見つかる事がありますが、自営業や主婦の方などで定期検診を受ける機会があまりない方は要注意です。
やはり、定期的な検診や根気強い治療が必要だといつも思います。
“糖尿病は砂時計のような疾患です”といつも患者さんに説明します。糖尿病と診断された瞬間に、砂時計の砂が落ち始めます。治療が上手く行って,糖尿病が落ち着き砂が落ちなくなった様な状態になったとしても、下に落ちた砂は元に戻りません。病気が落ち着いていたとしても、落ちた砂が長い期間をかけて、知らず知らずのうちに悪くなって行く事がよくあります。これを、合併症と言い、糖尿病が恐れられる理由でもあります。
糖尿病は血管が傷んでいく病気です。眼科を受診する事で、眼の良し悪しだけでなく、眼の血管を見る事で、全身の血管の状態も把握できます。これが、糖尿病と診断させた人が、眼科を定期的に受診することの本当の意義だと知っておいてください。
糖尿病があるかどうかを少なくても一年に一回は知る事、糖尿病と診断されたら一生、定期的な検診を受ける事がとても大事な疾患だと言うことを是非知っておいてください。
今日、嬉しい知らせがありました。
手術前は糖尿病性網膜症による両眼の視力低下のため、一人で歩くことも出来なかった50代の方が、手術後の受診時に外来で楽しそうにスマホを操作される姿を見て、思わず目頭が熱くなりましたと言う内容のメールを紹介先の先生からいただきました。私も大変嬉しかったですし、この様な心優しい先生と連携できている事に改めて心より感謝いたしました。また、明日から頑張ろうと思います。本当にありがとうございました。
編著 さいたま市のくらかず眼科 院長 倉員敏明