院長ブログ

硝子体出血

2024年9月12日

 


硝子体出血は網膜や視神経乳頭からの出血が硝子体内に広がることで生じます。

硝子体は眼球の中を満たすゼリー状の物質で、本来血管ではありません。そのため、網膜の血管が破れたり網膜に新しい血管(新生血管)ができて破れたりすることで、硝子体出血が起こります。

硝子体出血の原因となる疾患には様々なものがあります。最も多いのは新生血管からの出血です。新生血管は糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞性症、加齢黄斑変性症などの病気の進行過程で発生し、通常よりももろいため破れやすいと言う特徴があります。

硝子体出血の症状は出血の程度によって異なります。軽度の視力の低下や違和感程度で経過観察で様子が見れるものから、出血多量の場合などで、原因探索をせずに放置をした場合、重篤な視力障害を残すこともあります。

主な原因
後部硝子体剥離、 (後部硝子体剥離に伴う)網膜裂孔 網膜剥離 眼球打撲などの外傷
くも膜下出血  網膜細動脈瘤 血管炎を伴うぶどう膜炎 新生血管の破綻 (糖尿病性網膜症、網膜静脈分枝閉塞症、加齢黄斑変性症、先天性血管異常)

治療
まずは、なぜ、硝子体出血が起こったのか原因を突き止めることが最も大切です。

そのため、眼底の精密な検査を行います。出血が軽度で眼底が観察できる場合は、接眼レンズを用いながら慎重に観察を行い、周辺部に網膜剥離や黄斑近くに網膜下出血がないことを確認し、患者様に必要性を説明し、短い期間で経過を観察します。出血が多く眼底が観察できない場合は、 エコー検査を行い網膜剥離や網膜下出血の有無を確認しますがこれには限界があります。

この時大事なことが、反対眼の観察をすることです。反対眼に硝子体出血の原因となりうる所見がある場合があり、それが診断の助けになることがあります。例えば今まで患者様ご本人も気づいていなかった、糖尿病性網膜症や網膜動脈硬化が見つかったりすることがあります。

1番厄介なのは、特にこれと言う既往症もなく反対眼にも所見がない時です。この場合は原因を突き止めて網膜の状況を把握するために、緊急で手術をする必要が生じますが、年齢によって念頭に置く疾患があります。若い50代位の人であれば網膜剥離、 70代前後の人であれば加齢黄斑変性や網膜細動脈瘤、60代から70代位で意外と多いのが、自覚症状が無く気づかれずにいた網膜静脈分枝閉塞性から生じた新生血管からの出血です。

緊急性は少ないことが多いですが、糖尿病性網膜症に合併する硝子体出血においてもレーザーをしっかり入れている人とレーザーを入れてない人で処置が変わってきます。レーザーを入れてない人の硝子体出血は活動性が高く網膜の状態も重篤化することが多く、場合によっては、 糖尿病のコントロールが悪くても手術をせざるを得ないことが良くあります。しかし、レーザーがまんべんなく入っている場合は、陳旧性の新生血管からの出血のことが多く、網膜剥離などを合併することは多くないので、少し様子を見ることもあります。また硝子体出血が引いたとしても、人によっては硝子体が変性し白濁することで見え方に異常をきたし、改善しない人もおられます。その場合は後日硝子体手術を施行し、硝子体の混濁を除去することがあります。

倉員 敏明 院長の独自取材記事

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